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日本のセルダム・シーン

Wfs 小樽フェス05,06に出演した老舗ブルーグラス・バンドThe Way-Faring Strangersが再デビューしました。東京・国立と言えば彼らが産声を上げたお膝元。桜が咲き誇るこの地で、1年間の切磋琢磨の結果を咲かせました。以下今年の小樽フェスにOle Country Boysの一員として参加する大島正光氏がオーナーの店、”はっぽん”でのライブ風景をロイ田沢が速報します。

新生ウエイファー都内初ライブ
冴えわたるブルーグラス・ハーモニー

昨秋の伊勢原オープリー(Big Mountain Opry)で再デビューしたThe Way-Faring Strangersが3月28日(金)、桜満開の東京・国立、”はっぽん”でライブを行い、みごとな復活ぶりを見せてくれた。1年前にギター&ボーカルの担当として金子武美(桐朋高校OB)が加わり練習を積んできたが、その成果を問う日でもあった。このバンドは1959年に誕生以来、特定の店・場所での定期ライブは行ってない。いつどこに行けば必ず聴けるというバンドではないので、あのセルダム・シーン(Seldom Scene、およそ目にすることがないというバンド名の著名ブルーグラス・バンド)のような存在と言えるかもしれない。この日も新曲を随所に折り込みながら、譜面台はなし。ボーカル参加の少ない萩生田和弘(Bj)だけがアンチョコを楽器に貼り付けてるぐらい。”その紙を仲間がいたずらしてはがすので、最近ではポケットに予備をしのばせてる”とリーダでMCの近藤俊策(Ma)が舞台裏を明かす。

Wf2s   19:20インストBattle Hymn Of Republicでキックオフ。続いてキャリアウマンの先達と言える女流パイロット、アメリア・エアハルトの悲劇を歌ったAmelia Earhart's Last Flightを、金子がていねいな解説を加えた後に披露。なるほど、ブルーグラスは詞は暗いのに曲調は明るいものが多いことが分かる。新曲が続く、近藤のThis Morning At 9、そしてOld Flamesでは珍しく萩生田がギターを手に。おなじみWhen You Kneel At Mother's Graveの後はまた新曲だ。Behind These Prison Walls Of Love、カルテットボーカルが実にすばらしい。最後に曲名だけで酔っぱらいそうなWhiskey Before Breakfast 、全7曲で1stセットを終了。店内は立ち見状態である。

近藤ブルーグラス教室の生徒でもあるウーマン・デュオLilyLenlen(ギター2本。2人のペットの名前を転用)の登場だ。介護班として近藤、萩生田、林京亮(Ba)が残り、日産自動車のコマソンでもおなじみのThe Sunny Side Of Life。クラスター・プラッカーズの曲からは、I Still Miss Someone とKeep On Loving Youを。I Still~は近藤の男声コーラスが隠し味で利いている。最近ブルーグラス・フェス界で評判のガールズ・デュオBlueBonnets(マンドリンとギター)に曲選びや唱法がよく似ている。”BBに負けるなよ”リスナーの声に、”トシでは負けないわよ”。

ウエイファーと対バン予定であったブルーグラス・フォーク系のThe Froggiesが出演取りやめになったためピンチヒッターをアイリッシュ楽器演奏の夫婦ユニット、DulciCafeが務めた。奥方はダルシマ担当でピアノの原型のような120本の鉄線を木製のハンマーで叩き、弾ませながらの演奏、ミスターは弦の張り方や形状がマンドリンに似たアイリッシュ・ブズーキを低音でかき鳴らす。難解なゲール語表記の曲名が続く中、映画”タイタニック”のアイリッシュ・ダンスシーンで演奏されたと言う曲や、”虹の彼方”(Somewhere Over The Rainbow)には癒される。時節柄、”さくらさくら”のリクエストにも気軽に応じてくれた。

Wf4s 21:25、ウエイファーの2ndセットが始まる。みなミラーボールのように輝くベストを着用し、1stセットと雰囲気を変える。インストEl Dedoを終え、定番Banks Of The Ohio、これも恋人を川に突き落とす恐ろしい歌詞に反し、絶妙のトリオボーカルと相まって、軽快な曲調に心が和む。 Pathway Of Teardropsは”高音部に無理がきかない金子のためにキーを下げて”(近藤)の演奏だが、これまたブルーグラス・ハーモニーの醍醐味満点だ。 本場英国では禁止となった狐狩り(米・バージニア州などでは盛んである)を歌うFox On The Runでは萩生田も加わり4重唱、部分輪唱もあって圧巻。インストDouble Eagleは、バンジョーからギターに転じた金子の研鑽ぶりを示すための選曲。ギター、バンジョー、マンドリン、ドブロ、ギターと各パートが順にソロをとる、ジャズバンドにはよくみられるが、ブルーグラスならではの奏法で、正にメンバー全員がスターである。林がリードボーカルのRememblance Of YouとI'm Coming Back But I Don't Know Whenに次いで、過去2回小樽フェスでも好評だった”母からの便り”(作詞作曲・田村守。昨年は福森千花が小樽フェスで英語バージョンを発表)、”郵便番号制度の普及ソングとして6000枚売れた”(近藤)思い出深い曲。エンディングは軽快にAunt Dinah's Quilting Party・・・。”もう終わりか、さびしいな~”などの声がかかるとアンコールに応えざるを得ない。有名曲Jesse Jamesでは初代から頑張っている武田温志がドブロをフィドルに持ち替えて熱演、新曲ではマッターホルンでの遭難の歌Matterhornをまたまた明るい曲調で締めくくった。全18曲のウエイファー・サウンドを50名超の中高年男女ほぼ半数づつ、例外なく堪能したに違いない。それにしても、こんな少人数で日本のセルダム・シーンを独占していいものだろかと気にかけながら、花冷えの桜の町を後にした。

           文中敬称略 (リポーター: ロイ田沢 2008-3-29)

写真:前川新

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